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2021.3.19不妊症への漢方薬によるアプローチ

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

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不妊症への漢方薬によるアプローチ

先日の3月前半のコラムでは、女性特有の症状に関する悩みについて色々と取り上げさせて頂きました。



今回は前回の内容にもかなり関わってくる話になりますが、全国に多くの悩みを抱えて過ごしていらっしやる方がいる「不妊症」について、昨年の7月の投稿に引き続き再度、よく処方される漢方薬のことなども含めて少し加筆しながら取り上げてみたいと思います。






関連リンク:不妊症に悩む方々にとって漢方薬が果たす役割



まずは昨年7月のコラムで不妊症に関して話した内容を要約して振り返ってみると、



◎不妊症とは、子宝を望んで夫婦生活を営んでいるにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態のこと。





◎主な原因として考えられるものには、「排卵障害」「卵管障害」「頸管障害」「子宮障害」「造精機能障害」「卵子や精子の老化」などがある。





◎全体の約4分の1の原因は男性にあるとも言われており、決して女性任せにしてはいけない。





◎病院での治療では、ホルモン療法や外科的措置、人工授精、体外受精、顕微受精などの高度生殖補助医療(ART)を施す。それでも成功率は低く、原因不明とされるケースが多い。





◎漢方は、すべてのタイプの方の心身の状態を整え、ホルモン分泌を活発にして、よい卵子、よい受精卵、着床しやすい子宮内膜を作り上げることをサポート。
加齢や冷え、ストレスなどからくるものも含め、原因がよく分からないケースもアプローチができて、病院での治療による成功率も確実にアップすることができる。





◎漢方相談においては、メンタル面も含め治療後のこともずっとフォローを続けて行く。



といった主旨の話をさせて頂きました。






いかに妊娠しやすい体を作り上げるか




今もなお、全国の夫婦の約1割が何らかの不妊の悩みを抱えていて、調査によってはその中の約3分の1が原因不明とも報告されています。



高度生殖補助医療(ART)は年々進化しており、子宝に恵まれないご夫婦にとっては、大きな希望となりますが、やはり不妊改善のベースとなるのは、子宮・卵巣・精巣などの臓器が本来の自然な働きを行えるように、そしてその器官としての役目を果たせるように、しっかりと状態を整えていかに妊娠しやすい体を作り上げるかというところだと思われます。



漢方相談では、器質的な検査での原因不明のケースも含めひとりひとりの体質に合わせて、子宮・卵巣・精巣等の環境改善や、骨盤内の血流量の改善、さらにメンタル面が不妊に及ぼす影響の緩和など、赤ちゃんが授かりやすい心身をサポートします。



なかなかゆっくり話が聴けないところにも十分に時間をかけてカウンセリングを行い、検査や測定による結果も、きちんと検証しながら原因と思われる部分に対応していきます。






妊娠に至るまでの流れについて




女性の皆様はすでにご存じの方々が多いかと思いますが、簡単に〝妊娠に至るまでの流れ″を確認しておきたいと思います。



1.生理が始まると、卵巣の中にある卵胞は脳の下垂体から分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の刺激で発育し、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」をどんどん出すようになり、子宮内膜を厚くしたり、頸管粘液(おりものの一部)を増やして排卵の準備を開始する。





2.生理から2週間目頃には卵胞の成長はピークになり、多量に出た卵胞ホルモン(エストロゲン)が今度は脳下垂体からの「黄体形成ホルモン(LH)」の分泌を促して、これにより卵胞の中の卵子が膜を破って卵巣から飛び出して「排卵」が起こる。





3.排卵された卵子は「卵管采」というところを通り卵巣と子宮をつなぐ卵管に入り、ここまでたどり着いた精子と出会い合体する。これが「受精」となる。





4.そうしてできた「受精卵」は分裂を繰り返しながら、約1週間近くかけて子宮内へ移動。
その間に、卵巣の中には「黄体」ができて、そこから分泌される「黄体ホルモン(プロゲステロン)」により、着床に備えて十分の厚さになった子宮内膜のベッドが作られる。





5.子宮に入った受精卵は、この子宮内膜のベッドに潜り込み、「着床」して〝妊娠″が成立。






不妊の原因にもなる疾患と対応する漢方薬




このような妊娠までの流れの中で起こる、「排卵障害」「卵管障害」などの様々な症状が不妊症の原因の一端となっているのですが、さらに病院での詳しい検査を行うことにより、こうした症状を引き起こしているもととなる疾患の存在がいくつか明らかになってきます。



『子宮内膜症』


子宮内膜の組織が、子宮以外の部位で発生する病気。通常、子宮の内側からはがれた内膜組織は月経血として体の外に流れ出すが、子宮以外の場所で増殖すると腹腔内にとどまり、卵管の癒着やチョコレート嚢胞などの骨盤内での癒着を起こし不妊の原因となる。
薬物療法としては、主にホルモン療法などを、さらに症状が重ければ外科的療法を行う。
漢方治療では、各器官の滞りを防ぎ流れをよくする「桂枝茯苓丸」「通導散」「血府逐瘀湯」「冠心逐瘀丹」等の〝活血化瘀剤″を中心に、気の流れをよくする製剤も加えて処方する。



『多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)』


成熟しきれなかった卵胞が卵巣内に残り、ネックレスのようにつながった状態を特徴とする症候群。男性ホルモン値の上昇などの原因により、卵胞の膜が硬く破れにくくなってしまい、排卵が困難になり、卵胞が卵巣内にたくさん残った状態となって無月経、無排卵などの不妊の要因となる症状を起こしてしまう。
薬物療法としては、排卵誘発剤の服用やホルモン注射、外科的療法としては、腹腔鏡下手術で卵巣表面に穴をあけて排卵しやすくする。
漢方治療では、卵胞やその中の卵子をきちんと発育させるために、成長を主る(つかさどる)
〝腎″を補う「鹿茸」や「地黄」等を中心とした〝補腎薬″をベースに、気血の滞りなどがあれば、それに見合う漢方薬を加えて処方する。



『高プロラクチン血症(HPRL)』


まだ妊娠も出産もしていないのに、乳汁の分泌を促進するホルモンの「プロラクチン」が過剰に分泌されてしまう状態。胸の張りや乳汁の漏れが起こるとともに、生理や排卵が抑制されたり、受精卵の着床に影響を及ぼしたりする。基礎体温で見ると、やや低温層が長くて、高温期への移行に時間がかかり、かなりギザギザで不安定といった特徴があらわれる。
薬物療法としては、主にプロラクチン抑制剤等が使われるが、この症状の原因が甲状腺機能低下や下垂体の病気ならそれぞれの治療薬の服用を、薬の副作用ならその服用中止を行う。
漢方治療では、不安やストレスによる、自律神経やホルモンバランスの乱れからくるものと捉えて、気の流れをよくして、プロラクチンの過剰な分泌を抑制する「逍遥散」「四逆散」「加味逍遥散」などの〝疎肝理気剤″に「炒麦芽」を加えた処方を使用する。



上記以外にも不妊の要因として診断される疾患は多々あります。






まずは「基礎体温」のチェックから




子宝計画を始める上で、もっとも広く知られていて最初に取り組むことは、日々の「基礎体温」のチェックをしていくことです。



月を通して基礎体温を測ることは、器質的な検査を行うことなく排卵日や生理周期、ホルモン分泌の状態、卵胞・卵子の発育状況、疾患の可能性などを知るための、とても重要な情報源となり、不妊治療における周期療法のベースにもなります。



基礎体温とは、本来、活動している時の体温の変化などの要因を排除した、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか使っていない時の安静状態の体温のことを指しています。
そのため、出来るだけ6時間以上の十分な睡眠をとって、朝目覚めたらすぐに起き上がることなく動き出す前にほぼ毎日同じ時間に測ることがポイントとなります。
そしてその測定には、小数点の第二位まで正確に測れる専用の婦人体温計を活用します。



正常で理想的な基礎体温のパターンとしては、月経周期の前半(低温期)と後半(高温期)の期間がほぼ均等で、きれいに2層に分かれ、その温度差が0.3~0.5℃で、高温期への移行期は3日以内でスムーズに上がり、そのまま安定するのが望ましいとされています。






基礎体温から導く漢方薬とは




基礎体温のリズムの変化から見てとれる不妊や疾患の兆候、および、その漢方的な捉え方は多岐にわたりますが、一部を紹介しますと
・生理期に急に体温が上がる日がある ⇒ 子宮内膜症の疑いあり。瘀血改善の漢方を使う。
・高温期がない・全体的に低体温 ⇒ 無排卵やPCOSの疑い。腎と気血を補う漢方を使う。
・ギザギザで高温期短く移行期長い ⇒ 黄体機能不全やHPRLの疑い。疎肝・補陽の漢方で。
・生理周期短く排卵早い・全体的に体温高い ⇒ 卵胞の成長が不十分。腎陰を補う漢方を使う。
などの例があげられます。



また、こうしたリズムがほぼ正常に近い場合には、「月経期」「低温期」「排卵期」「高温期」と、その役目を十分に果たせるように、周期療法としての薬を各期間に合わせて投与します。







大事なことは全体的な傾向をつかむこと



いずれにせよ大事なのは、全体的な傾向をつかむことです。もともと体温は、その日の室温や体調によっても微妙に変化することもありますし、生理の周期も人それぞれです。
神経質になりすぎることなく、また、基礎体温をつけ忘れた日があってもあまり気にすることなく、3、4周期くらいは継続して測定することを心掛けましょう。






漢方は様々なアプローチで妊活をサポートします




人工授精や体外受精などの高度生殖補助医療に何度かチャレンジしてもなかなか成功に至らない人も、夫婦で器質的な検査をひと通り行ってもこれといった原因が分からない人も、
漢方薬を使って、女性は基礎体温のリズムや生理全般の状態をきちんと整えていくことで、また、男性は精子の質の向上や補腎を行うことで、妊娠へ向けての確立は大きくステップアップしていくのではないかと思われます。
妊娠しやすい体づくりに、漢方薬はあらゆる方面からアプローチしていきます。




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梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
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