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2021.4.21健やかな生活をサポートする子午流注という考え「各臓器が活発に働く時間」

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

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健やかな生活をサポートする子午流注という考え「各臓器が活発に働く時間」

体の中の各臓器には、それぞれに、いちばん活発に働く時間があると言われています。

その時々において、私たちはどんな行動や養生を心がけることで、日々をより健やかに過ごすことができるでしょうか。

東洋医学の考え方の中には、「子午流注(しごるちゅう)」という、時間医学的な体の働きと時刻の関係をあらわしたものがあります。

子午流注の「子午」とは時刻のことで、日本の古時刻・十二時辰と同じく、24時間を2時間区切りで分けて十二の干支を割り振ったもので、「流注」とは各臓器を活発にするために順番に巡っている、血液とエネルギー(気)の流れを指しています。




子午流注と養生について




◆23時~1時 子(ね)の刻 『胆の時間』



胆汁の生成・分泌などの新陳代謝が最も盛んな時間です。
子の刻は、通常、眠りが最も深くなり、体の様々なところを修復する成長ホルモンが多く分泌されているので、この時間にしっかり寝ていると、翌日の元気につながります。
また逆に、この時間まで起きていることが多いと、肝臓や胆嚢の病気にかかりやすかったり、胆石などもできやすく、さらに胆が主る(つかさどる)と言われている決断力も鈍ってきます。



◆1時~3時 丑(うし)の刻 『肝の時間』



肝臓が排毒・解毒・老廃物の処理等を行い、浄化された血液を生成するピークの時間帯です。
加えて、肝臓の再生能力が最大限に発揮される時間帯でもあるので、その働きを助けるためには、体は無意識の熟睡状態にあるのがベストです。
この時間も起きていると、汚れた血液が巡りやすくなり、色んな病気の原因にもなりますし、
肝臓の血を貯えたり気を巡らす働きがうまく行かず、だるさや冷え、イライラ、特に女性は生理不順などの症状が起こりやすくなります。



◆3時~5時 寅(とら)の刻 『肺の時間』



徐々に浅い眠りになっていき、体が静から動へと変化していく時間です。1日のスタートは、この肺が活発になる時間から始まると言われています。
目覚めに向けて、前の(肝の)時間に浄化された血液を、呼吸とともに全身に送り込みます。
肺系統のエネルギーの流れに問題があったり、肺が弱っていたりすると、この時間帯に咳・痰や喘息発作、あるいは、皮膚呼吸に関わる痒みやアトピーなどがよく発症します。



◆5時~7時 卯(う)の刻 『大腸の時間』



表裏の関係にある肺から送られてきたエネルギーで大腸の働きが盛んになる時間です。
水分の吸収や排毒作用も活発になるので、この時間にしっかりと起きて排便するリズムを作ると、日頃の便通も整って、朝からの1日も気持ちよくスタートできます。
それから腸の蠕動運動は、ストレスにとても影響をうけやすいので、朝は時計のアラームなどに急かされることなく、できるだけこの時間に自然に目が覚めて、行動に余裕をもってゆったりと過ごせるとよいでしょう。



◆7時~9時 辰(たつ)の刻 『胃の時間』



胃がいちばん元気に働いて、消化が盛んになる時間帯です。
大腸の時間に老廃物を排出したあとで、次の時間にきちんと食事をとって、しっかりと栄養を消化し吸収することで、1日を乗り切るエネルギーを生み出すことができます。
できればこの時間の食事には、温かい和食などがおすすめです。
また、食事を抜いたり、軽い飲み物だけで済ませることが長く続くと、胃の機能が低下したり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などにもかかりやすくなるので気をつけましょう。



◆9時~11時 巳(み)の刻 『脾の時間』



〝脾″とは、東洋医学でいうところの消化器全般、および、その機能をあらわした言葉です。この時間はさらに消化や吸収が進んで、消化器系によって、体全体に栄養物質や水分などが最も巡り運ばれる時間帯です。
気血がいちばん養われている時なので、仕事や勉強などに集中するにはよい時間です。
また脾は、水分の停滞による湿を生じやすいため、特にこの時間には、冷たいものなどをたくさんとって脾の働きを悪くさせないように注意しましょう。



◆11時~13時 午(うま)の刻 『心の時間』



心臓の血液循環を行うポンプ機能や、精神活動を主る〝心″の働きが高まる時間帯です。
血液が全身にしっかりと送られて、血が充実するので精神的にも安定しやすい時です。
この時間は激しい運動などは避けて、少し体を休め、くつろいだ時間を過ごしましょう。
できれば、気の合う仲間とランチタイムを楽しんだり、時間に余裕があって、ちょっとしたお昼寝などができれば、午後からの活力にもつながるでしょう。



◆13時~15時 未(ひつじ)の刻 『小腸の時間』



吸収された栄養分の分別機能が高まる時間帯です。小腸は、体にとって必要な栄養素を取り込んで各臓器や組織に送り届け、不必要なものを排泄機能をもつ臓器へと送り込みます。
適度に水分をとったりすることで、栄養分がドロドロにならず、流れがスムーズになります。
この時間もまだ、動き過ぎると栄養の吸収がうまく進まなくなるので、なかなか太れない人はあまり積極的に活動することは控えるように心掛けましょう。



◆15時~17時 申(さる)の刻 『膀胱の時間』



健康な人なら、1日のうちで体温や血圧が最も高くなり、体力も充実している時間帯です。
この間に活発になる膀胱は、排尿と身体の体液を調整する器官です。しっかりと尿を出して体にこもった熱を逃すためにも、この時間のトイレは、我慢しないで行くようにしましょう。
それから膀胱からの経絡は、大脳にもつながっているので、読書や勉強事、重要な仕事などを集中して行うのには、比較的効率も上がりやすくて最適な時間となります。



◆17時~19時 酉(とり)の刻 『腎の時間』



水分代謝を主り、生命活動のエネルギーとなる精力をたくわえる、腎が活動的な時間帯です。
腎は腎臓の働きだけでなく、ホルモンバランスや内分泌系、アンチエイジングにも大きくかかわってきますので、できるだけこの時間に、きちんと夕食で栄養をとり、精力をたくわえて、腎に良い食べ物を選んだり、補腎薬といわれる漢方薬を飲むとよいでしょう。
また、冷えには特に弱い臓器なので、季節にかかわらず十分注意して過ごしましょう。



◆19時~21時 戌(いぬ)の刻 『心包の時間』



〝心包″とは、心臓を包む膜、あるいは袋のことを意味しており、血液の循環を調整して、邪気の侵入から心臓を守る働きを持っています。
そのためこの時間帯は、軽いウォーキング等で心機能を高めるのにもよいのですが、心包は喜怒哀楽の感情との関わりも深いため、できるだけ気持ちが高ぶらないように、ゆっくりとお風呂に浸かるなど、なるべくリラックスして過ごすように心掛けるとよいでしょう。



◆21時~23時 亥(い)の刻 『三焦の時間』



〝三焦″とは、体の上焦・中焦・下焦に分かれたエネルギーや体液などの運行経路と、その流れの調節機能を意味しており、リンパ管系や免疫系と同様に見られることもあります。
この時間に高まる三焦の運行経路が、1日の各臓器にたまった疲労をいかに回収しリセットして行けるかは、引き続きリラックスした時間を過ごせるかにかかっています。
就寝に向かって内臓の働きを静めていく時間でもあるので、なるべく食べ物は口に入れずに、質の良い眠りに入れるようにしていきましょう。



子午流注を意識した生活で健やかに



近年、話題になっている、病気の発症や症状の憎悪のリズムに合わせた薬の有効性を研究している「時間薬理学」も、食べる時間により代謝や吸収が異なることを唱える「時間栄養学」も、ノーベル賞を受賞した「体内時計の仕組みを解明した分子メカニズムの発見」も、全てこの二千年以上前の〝子午流注″の考え方と相通じるものがあることには、とても驚かされます。



体内の自然な流れに合わせた子午流注のリズムに沿って、日々の生活を送るのはなかなか難しいことですが、こうして少しでも、その時間ごとに活動的な臓器のことを知って、その時々の行動や養生法を意識して過ごしていけば、私たちは、より健やかな体に近づけるものと思われます。





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  • tadsun

    参考になりました。どこまで現代の科学や生理と整合性があるのか知りたいと思いました。

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