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2021.1.6年末年始に弱った胃腸を整え、増えた体重をリセットする漢方薬

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

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年末年始に弱った胃腸を整え、増えた体重をリセットする漢方薬

年末年始はいかがお過ごしでしたか?この時期いつもより食べる機会や量が大幅に増えて、胃腸の調子を壊したり、体重の増加が気になる方も多いのではないでしょうか。
そんな方には、お正月明けの、それぞれの気になる症状に合わせた、上手な漢方薬の活用をお薦めします。




胃腸の調子が思わしくないという方にオススメの漢方


◆『胃苓湯』
〝平胃散″と〝五苓散″という処方を合わせたもので、消化管の運動を促進して消化吸収を高めて、水分の停滞を取り除き、下痢や吐き気を改善してくれます。
食べ過ぎ・飲み過ぎ・胃のもたれ等でたびたび胃薬を飲むことがある人や、冷たい物をよくとって胃が冷えた感じがある人、下痢ぎみの人に良く効きます。
また、下痢の水分を便から尿へと出口を変える働きもありますし、下痢自体をすぐに止めてしまうわけでもないので、排出する必要があるウイルス性のものにも使うことができます。
舌を見ると、苔(こけ)が白くねっとりして広がった感じがあります。



◆『半夏瀉心湯』
配合生薬の「半夏」がげっぷや吐き気など、下から上に上がってくる感じ(上逆)をおさえ、「黄連」「黄芩」が胃の上部の熱を冷まし、「乾姜」で腸を中心にお腹を温めてくれます。
胃が熱い感じや胸焼け感、みぞおち辺りのつかえ、神経性胃炎、腹がよく鳴ってガスを生じやすい、軟便・下痢傾向の人などに多く処方されています。
また、よく脂っこいものを食べたり、ストレスでお腹をこわしやすい人、口内炎ができやすく口臭が気になる人にも効果的です。
舌を見ると、苔がやや黄色くねっとり広がった感じがあります。

他にも漢方薬は、〝胃″ではなく〝腸″のトラブルである「便秘」にも、それぞれの体質に合わせて効果を発揮してくれます。

ここでは、具体的な処方名と、その解説についての話は割愛させて頂きますが、漢方製剤の便秘薬の特徴としては、西洋薬に比べて穏やかに効いてくる(突然効いてきたりしない)、わりと習慣性がつきにくい、便秘と下痢を繰り返しながら便が出にくい症状(しぶり腹)にも対応できるということなどが上げられます。




増えてしまった体重にオススメの漢方


◆『防風通聖散』
肥満症という効能がある処方の中で、最もポピュラーな漢方薬で、食欲旺盛でいつも美味しく食べられるタイプの人に向いています。
食欲増進ホルモンのグレリンの分泌を抑え、発汗・利尿・便通・利胆(胆汁を分泌して脂肪の消化を助長)の作用で、あらゆる経路から排泄・解毒を促します。
また、臓器を弱らせ代謝を悪くして、余分なものを溜め込みやすくする原因となる「過食による熱」も冷ましてくれます。
ただし、冷え性の人は冷えが強くなったり、胃腸が弱い人は下痢や軟便になったり、食塩制限が必要な人は芒硝(硫酸ナトリウム)が含まれているために注意が必要です。



◆『防己黄耆湯』
食欲が強いわけでもなく、そんなに量も食べられないのに太りやすい人、ぽっちゃりしていて汗かきでむくみやすく、胃腸が弱く疲れやすいタイプの人に向いています。
胃腸を元気にして代謝機能を立て直し、食べたものをエネルギーに変えてくれます。
そして、全身の水の巡りをよくして余分な水分を排出し、むくみや水太りを解消して、締まりのない体を引き締めてくれます。



◆『大柴胡湯』『柴胡加竜骨牡蛎湯』
現在のコロナ禍なども含めた気疲れやストレス等により、自律神経が乱れて食欲が異常に増進したり、お腹が空いてないのに常に何か口に入れたくなって、体重が増えてしまった人に向いています。
ストレスによるエネルギー(気)の停滞を改善して、自律神経の過剰な亢進を静め、胃熱などの過食の原因となる体の熱を取り除き、胃腸の機能を高めて代謝機能を整えます。




体質にあわせた代謝改善の漢方


さらには、『当帰芍薬散』、『当帰四逆加呉茱萸生姜湯』、『桂枝茯苓丸』、『桃核承気湯』といった処方も、各自の体質にあわせて、冷えや血流の停滞が原因で起こる水滞や瘀血を改善し、水分や血液の巡りを良くして基礎代謝を上げて、痩せやすい体になるのを助けてくれます。

漢方薬は、ただ単に、「肥満症に」とか、「皮下脂肪が多い方に」と書いてあるものを選べば、誰でも代謝が上がって痩せられるというものではないので、それぞれに、代謝が落ち体重が増えてしまった原因をきちんと見極めた上で、処方を選ぶことが大変重要となってきます。




漢方だけでダイエットは成功しません


ダイエットを成功させることは、決して漢方薬を飲むだけで出来ることではありません。
そこにはすべて〝生活習慣の見直しと改善″が根底にあってこそ効果が期待できるのです。

例えば、年末年始の間に夜ふかしをしてしまった人は、なるべく早く、ふだんの生活と同じ睡眠のリズムに戻しましょう。睡眠不足は、食欲ホルモンの分泌を増加させたり、新陳代謝の低下を起こします。(もちろん、寝過ぎもリズムが狂ってしまいます。)

また、食事に関しても、できるだけゆっくりと噛む回数を意識しながら、さらにしっかりと噛むことを心掛けましょう。そうすることで満腹感がきちんと感じられるようになり、唾液の分泌も増えて、胃や消化器系の働きを助けて代謝機能の向上につながります。

それから、人は加齢とともに基礎代謝力が低下していきます。
代謝熱を作る筋肉の減少や衰えが、基礎代謝の衰えにつながってしまうので、日頃から歩く機会を増やして筋肉を鍛え、下半身の血流を良くして、代謝力のアップにも努めましょう。

胃腸の調子を壊したり、体重が増えてしまった原因となる生活習慣をきちんと見直して、なるべく規則正しい生活を心掛けることで、漢方薬の効果はさらに高まるものと思われます。





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梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
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