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2020.9.1コロナ禍の今だからこそ知っておきたい『薬剤耐性菌』のこと

五條 元量

大賀薬局 太宰府病院前店 薬剤師五條 元量

コロナ禍の今だからこそ知っておきたい『薬剤耐性菌』のこと


風邪薬と言えば何?

「風邪の際に使用する薬」と言えば皆さん何を思い浮かべますか?
総合風邪薬、解熱鎮痛剤、咳止め、トローチ、うがい薬などたくさんの薬がありますよね。中には風邪と言えば抗生物質では?と思った方もおられるかと思います。
調剤薬局で働いていると服薬指導の際に、「風邪で受診したのに『抗生物質』は出てないのですか?」「早く治したいので病院に連絡して『抗生物質』を追加で出してもらってください。」など話される患者さんがしばしばおられます。
また市販薬で風邪を治療される方で、「抗生物質が入った商品を…と」尋ねられる事もあります。
私自身も幼少の頃から風邪にはよくかかっており、その都度抗生物質を使っていた記憶があり、抗生物質は風邪を治す魔法の薬の様に感じていました。



抗生物質は風邪には効果がない?
しかし実際のところ、現在の日本の医療では、一般的に言う風邪に対して抗生物質を使用する事は推奨されていません。
何故ならほとんどの風邪に対して抗生物質は効果がないからです。風邪の原因はウイルスが9割をしめており、ウイルス性の風邪に対して「細菌」の構造に効果がある様に作られた薬剤の抗生物質が効く事はありません。実は風邪の際に一般的に使用される薬は症状を和らげる作用や回復への手助けをする作用しか持たず、対症療法にあたります。ではどうして治るのかと言うと、体に備わっている免疫が働き、病原体を排除する事により治っていくのです。





抗生物質を使い続ける理由

では何故、効果のない抗生物質が処方されるのでしょうか?
大きく3つの理由が考えられます。

1.細菌性の感染症の可能性も存在するため
血液検査をすればある程度判断つきやすいのですが、診察時の所見だけでは細菌が原因である可能性が捨てきれない場合があることが理由の一つに考えられます。
例えば小児に多い溶連菌感染症が稀に大人にかかる場合もあります。

2.二次感染を予防するため
風邪で体力が落ちると細菌に感染(二次感染)し肺炎等にかかる可能性があるとして長年抗生物質が処方され続けて来ました。しかし今では抗生物質に二次感染の予防効果はないことが分かっています。

3.抗生物質は魔法の薬という思い込み
現在の医療制度ではむやみに抗生物質を処方する病院自体減って来ましたが、それでも抗生物質を希望する方が少なからずおられる事も大きな要因です。





抗生物質を使うデメリットとは?


抗生物質使用のデメリットとして真っ先に軽い下痢等の副作用が挙げられると思いますが、それよりも世界的にとても大きな問題として提唱されている事が『薬剤耐性菌』の出現です。
薬剤耐性菌と言われてもあまりピンと来ないかも知れませんが、細菌が自分たちにとって猛毒となる抗生物質に対しての耐性を獲得する事で抗生物質の効かない耐性菌に変化してしまうことを指します。
簡単に言えば、『薬が効かない形に細菌が変化した結果、今までの薬物治療が行えなくなってしまう』のです。

すでに薬剤耐性菌は世の中に存在しており、主にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクターなどが挙げられます。

重要な事は世界的に薬剤耐性菌による死亡者数は増加しており、このままの勢いで進むと2050年には年間1000万人に達する可能性があると予想されている事です。これはがんによる死亡者数の960万人を超えた数字です。
今年2月に発表された日本での薬剤耐性菌による死亡者数は約8000人/年との報告がありました。
現在は新型コロナウイルスの動向に全世界が目を離せない状況ですが、反対にこうした状況だからこそ治療法が限られてしまう薬剤耐性菌が将来発生する可能性に対して大きな関心と問題意識を持っておかねばなりません。



では耐性菌を作らないために一人一人が出来ることは何か?
1.抗生物質の使用を必要最低限にする!
まず、日本人は抗生物質に頼りすぎる傾向があります。世界的に見ても抗生物質の使用量が多いです。
少なくとも一般的なウイルス性の風邪に対して抗生物質は不用で、予防としても効果がないという認識が必要です。※もちろん診断により抗生物質の服用が必要と判断された場合は当然服用する必要があります。

2.薬は決められた飲み方で最後まで飲みきる!
抗生物質が処方された場合は抗生物質が効くと判断された疾患であるため、きちんと服用すること。※アレルギーや過敏症等がない限り。

2.余った薬は破棄する!
使わなかった抗生物質を風邪気味だからと再利用したり、よく効いたからといって他人への譲渡等は絶対にやめましょう。安易な自己判断による薬剤の使用はどの薬に限らず危険です。

4.感染症予防に努める!
感染症に対しての予防の徹底がそもそも薬剤耐性菌を体内に取り込まないことに大きく役立ちます。現在行われている新型コロナウイルス感染症予防のための様々な対策もこれらの感染症予防に通じています。

人類の歴史は長い感染症との闘いでもあり、そしてそれは現在も続いています。疫病が発生した際に神に祈ることしか出来なかった事が、18世紀以降のワクチンの開発や抗生物質の発見を始めとした医療の進歩により、ある程度の感染症をコントロール出来るようになりました。しかしながら一方で細菌やウイルスも変異し耐性を獲得する事であの手この手で生き残ろうとして来ます。私達の誤った知識や薬の使い方でそのチャンスを与えてしまい、将来の負の遺産を残す事だけは避けたいものです。

今回の薬剤耐性菌の事や抗生物質の事をもっとお知りになりたい場合はお近くの大賀薬局にご相談ください。



五條 元量

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五條 元量(かかりつけ薬剤師・健康サポート薬局薬剤師)
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地域の健康の質を高めることをモットーに働き、H30年に健康サポート薬局*の認定を受け、地域の方々の健康の保持増進を積極的に支援する薬局として活動しています。この超高齢社会を、いかに健康を維持し乗り越えていくかの鍵は薬局にあると考えます。しかし未だに薬局=処方箋がないと薬局に入れないという認識を持つ方は少なくありません。是非お薬の事だけでなく、生活や健康に関することなら何でもご相談ください。お待ちしております!
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