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2020.11.1その冷え、気になっていませんか?“冷えは万病のもと”

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

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その冷え、気になっていませんか?“冷えは万病のもと”

だんだんと秋も深まってきて、日ごとに気温も下がり出し、外は少しずつ寒さが増してくるのを感じるようになりました。

この季節に限らず、体に冷えを感じるということは誰にでもあることです。
そんな中でも特に、やや寒さに敏感ですぐに体が温まらない人のことは一般的に「冷え性」と呼ばれています。
この「冷え性」は、甲状腺や膠原病などの持病によるものを除き、病院での西洋医学の治療においては、検査をしても明らかな異常が見つけられることは殆どないために、〝冷えやすい体質″であると捉えるにとどまり、これといった処置をする事はありません。

一方で東洋医学や漢方の世界では、冷えを「万病のもと」として考え、特に持病もないのに冷えを強く感じたり、それが長く続いている人を未病状態の「冷え症」と定義づけて、様々な病気を引き起こす原因として捉えてきました。
そしてその「冷え症」は適切な治療をすれば改善できる症状として、体質に応じた治療法を確立してきました。
人と同じ場所にいても自分だけが体のどこかに冷えを感じていたり、暖かい所に移動してもなかなか回復せずに冷えが続く人は、明らかに「冷え性」ではなく「冷え症」と考えてよいでしょう。




「冷え症」を生む原因

では、この「冷え」を生む原因には、どういったものがあるでしょうか。主なものをいくつかあげてみたいと思います。

◆『食生活や薬の飲みすぎ』
 冷たいものや水分の取りすぎは、内蔵機能や水分代謝機能を低下させ、体の熱産生量を弱めてしまいます。また食べ過ぎも、消化しようと胃に熱が集まり、体全体に熱が行きわたりにくくなります。それから鎮痛解熱剤などの薬をよく飲んでいる人も、〝解熱剤″と言うだけに冷えを生んでしまいます。

◆『筋肉量の低下』
 運動不足や過度なダイエット、老化などは、筋肉の量の減少を起こします。このことで筋肉量に大きく影響される基礎代謝が下がってしまい、熱を生み出す力が弱くなります。

◆『環境順応性の低下』
 近年はエアコンなどの普及により、常に快適に保たれる場所が増えてきたため、室内外で感じる温度差が大きくなってしまいました。このため本来は、自然環境の変化に応じて熱産生など行う人体の順応性が低下してしまい、自律神経のバランスが乱れて体温がうまく調節出来ない人が増えてきました。

◆『過度なストレス』
 上記と同様に、強いストレスを長期間にわたって受けたりすることでも、自律神経が乱れ体温調節機能の低下を起こします。さらにストレスは、血管を収縮させて血行不良を招くため、血液が酸素や栄養素を全身に運び、体温を一定に保つ力を弱めてしまい、先端にある手足などの冷えを生じやすくしてしまいます。

その他にも、不規則な生活やホルモンバランスの乱れなど様々な原因が、体の熱を生み出す力や熱を巡らせる力、そして体温を整える対応力を弱らせてしまうことで、「冷え」という
状態を生んでしまい、それが長く続くことで「冷え症」へと進んでしまいます。




漢方薬を用いた「冷え症」の治療

漢方薬を用いた「冷え症」の治療では、冷える部位やタイプ、付随して起こる症状などによって、その原因を考察してきちんと見極めながら適切な処方を選定していきます。

例えば冷えのタイプを4つに分けて、その代表的な適応しやすい処方を選ぶとしたら

1.《手足などの末梢が冷えるタイプ》
栄養物質の不足(血虚)や血の流れの滞り(瘀血)によつて起こる冷えで、主な処方は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」「当帰芍薬散」「桂枝加苓朮附湯」「桂枝茯苓丸」など。

2.《下半身が中心に冷えるタイプ》
こちらもまた、デスクワークなどのお尻や腰の圧迫での血の流れの滞り(瘀血)による冷えや、更年期やホルモンバランスの乱れによるのぼせを伴う冷え、加齢で陽気を生みだす腎が衰えて起こる冷えで、主な処方としては「桂枝茯苓丸」「加味逍遥散」「温経湯」「八味地黄丸」「牛車腎気丸」「五積散」「柴胡桂枝乾姜湯」など。

3.《内臓が冷えるタイプ》
おなかが冷えるタイプのことで、下痢や腹痛、消化不良、頻尿、生理痛などの随伴症状を起こしやすく、体の中から熱が逃げやすく手足がほてる人もいる。主な処方としては「附子理中湯」「人参湯」「胃苓湯」「桂枝加芍薬湯」「大建中湯」など。

4.《全身が冷えるタイプ》
体内の栄養物質の不足(血虚)や、自律神経の乱れによる体を温めるエネルギーの不足(気虚)で、熱を生みだす新陳代謝も低下して起こる冷え。長く続くと危険なケースもあり受診をすすめる。主な処方は「真武湯」「四逆湯」「麻黄附子細辛湯」など。

といったように、ただ体を温める漢方薬なら何でもよいわけではなく、特にどの辺りが冷えるのかによって、使うべき処方がかなり異なってきます。

また漢方には、特有の〝気・血・水″の状態から分けて冷えを考察するなど、これに限らず様々な捉え方が存在します。

冷え症は、低体温を生じて免疫力の低下を招くとともに、頭痛、腰痛、腹痛、下痢、しびれ、生理痛、不妊症、皮膚病、喘息、不眠、心臓病、膀胱炎、腎炎、ガン、糖尿病、膠原病などのありとあらゆる病気を引き起こすきっかけとなります。
しかしながら、逆にこの冷え症の体質をしっかりと治療することで、こうした持病がある方の症状を和らげたり、病気を快方へと導くことも可能なんです。


あなたも体のどこかに気になる冷えを感じたりしていませんか?
この時期の冷えは、いつものことだからなどと放っておかずに、原因をしっかりと把握して正しい対応を心掛ければ、きっと改善するはずです。





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梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
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