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2020.10.1お薬相談室 Part1. ~便秘薬編~

福田 勇介

薬剤師 福田 勇介

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お薬相談室 Part1. ~便秘薬編~

便秘の定義

「毎日便が出なくて便秘だから下剤を処方してもらいました」
私が薬剤師業務をしている中でもこの言葉をよく耳にします。便秘に悩まされている人は男女問わず多いと思います。
ですが、大前提として排便回数や排便習慣において必ずしも1日1回の排便がある必要はありません。

では「便秘」とは何なのか…?診療においては、
・排便が週に3回より少ない
・排便時の排便困難感、残便感がある
場合などを「便秘」とされ、その状態が3ヶ月以上続く場合を「慢性便秘」とされているようです。

便秘の原因も様々です。大きな分類として器質性、機能性、薬剤性、症候性がありその中でさらに細かく分かれていきます。そして、それに対して使われる下剤も様々な種類があります。





便秘の定番 マグネシウムとセンナ・センノシド

今回のコラムではその中でも特に昔から現在に至るまで非常によく使われている酸化マグネシウムとセンナ・センノシドの2大下剤について特徴と正しい使い方から注意点まで簡単にでもお伝えできればと思います。

【酸化マグネシウム】(マグミット、重カマ)
・浸透圧性塩類下剤に分類され、体内にほぼ吸収されることなく大腸に到達し、浸透圧を利用して腸管内に水分を引っ張ってくることで便を柔らかくし排便を補助する。
・痛みを伴うことはほぼなく、習慣性や耐性はほとんどない。
・副作用も少なく安全に長期服用が可能な為、第一選択としてよく使用される。
・酸化マグネシウムの効果を最大限発揮する為と副作用の脱水症状を予防する為に、酸化マグネシウム服用時はコップ半分~1杯の多めの水で服用する。日常生活においては1日に8~10回のこまめな水分補給も併せて心掛ける。
・長期高用量服用や腎機能低下によって高マグネシウム血症を起こしやすい。
・併用注意薬が多い。(Ex.ビスホスホネート系骨粗鬆症薬、テトラサイクリン系・ニューキノロン系抗生物質)

【センナ・センノシド】(プルゼニド、ヨーデルS、アローゼン)
・刺激性下剤に分類され、大腸に到達すると大腸内の腸内細菌によって活性体になり大腸を刺激することで蠕動運動を促し、排便を促進する。
・大腸を直接刺激することによる痛みを伴うことも多く、習慣性(それがないと排便できない)や耐性(同量では効果が薄くなり徐々に量が増やさないといけなくなる)が生じやすい。
・長期連用で大腸表皮が豹柄に黒色化する大腸メラノーシス(※1)を生じやすい。

※1 センナ・大黄・アロエ等の大腸刺激性下剤を長期に渡り使用した結果、大腸粘膜が黒っぽく色素沈着した状態
 

上記で述べた事から、総合的に判断して個人的にセンナ・センノシドの漫然とした長期服用をお勧めしません。
大腸メラノーシスになれば、色素沈着だけでなく大腸の動きも悪化することで、さらに便秘を悪化させる負のスパイラルに陥ってしまう事にもなりかねません。
慢性的な便秘の場合は、酸化マグネシウム等の塩類下剤の調節使用をベースとし、どうしてもの時にセンナ・センノシド等の大腸刺激性下剤の力を借りるのが良いのではないかと考えます。
比較的安全な酸化マグネシウムですが、高齢であったり腎機能に不安があったりする場合は高マグネシウム血症を引き起こしやすい傾向がある為、定期的に血液検査で血中マグネシウムの数値を確認してもらいましょう。





個々に適した薬剤・治療のために薬剤師・医師に相談してください

また、併用に気を付けるべき薬が多い酸化マグネシウムである為、他に日頃から服用している薬があれば、併用は問題ないか?併用注意該当の場合は両薬剤の効果を最大限発揮できるよう服用タイミングや注意すべきポイントは何か?をかかりつけ薬局の薬剤師に相談することが望ましいです。

便秘の原因は多岐に渡り、便秘に対する薬も現在は様々なものがある為、自分の体質・生活習慣・併用薬に合った対応や処方をかかりつけの医師と相談し決めていく事がキーとなります。私自身も便秘で悩まれている患者様一人ひとりに合った排便コントロール方法を探すお手伝いができるよう今後も心掛けていきたいと思います。


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福田 勇介

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福田 勇介(研修認定薬剤師、かかりつけ薬剤師)



地域に根ざした薬局、地域住民から信頼される薬剤師を目指しています。お薬の相談だけでなく、お薬・疾患に関わるサプリメントや食事から日常生活に至るまでの幅広い相談に対応し、少しでも誰かの力になれたらと日々奮闘しています。

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