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2020.7.31寝つきが悪い人、よく目が覚める人

梅川 哲朗

大賀薬局 ライフストリーム 漢方薬 梅川 哲朗

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寝つきが悪い人、よく目が覚める人

最近、新型コロナウイルスの感染拡大による不安や、それに伴う在宅勤務や休校などで、生活のスタイルやリズムが変わってきたことも影響してなのか、眠れない事による不調の相談が増えてきています。

睡眠をとることは、疲れやストレスを和らげるのはもちろんのこと、免疫やホルモンの分泌を整えるなど、体にとって大事な役割を果たしています。

そこで、今回は「不眠症」という症状について少し考えてみたいと思います。




不眠症とは

不眠症とは、普段の睡眠と比較して睡眠時間が短くなり、日中の生活や活動に支障をきたしている状態のことで、WHOでは「不眠の訴えが少なくとも週3日以上あり、それが1ヶ月以上続いているもの」と定義しています。
ただ、4、5時間しか寝ていなくてもぐっすり眠れて、次の日に眠さやだるさなどが残っていなければ、それは不眠症とは言いません。
逆に8~10時間程寝ていても、寝つくまでにかなりの時間がかかり、途中何度も目が覚めて日常生活に影響を及ぼしていれば、それは不眠症の疑いがあると考えられます。




不眠症のタイプ

不眠症のタイプは大きく分けて、寝つきが悪い「入眠障害」、夜中に何度も目が覚めてその後なかなか寝つけない「中途覚醒」、朝に予定より2時間以上早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」、起きたら眠気やだるさが強くて疲れがほとんど取れていない「熟眠障害」の4つに分類されます。
そしてこれらの不眠症状を起こす原因は、精神的なストレスのほか、持病によるもの、アルコールやカフェインや飲んでいる薬の副作用、時差ボケや夜の騒音などの環境の変化によるもの、加齢によるものなど、人によってそれぞれ違ってきます。




不眠の症状の予防と改善策

こうした不眠症にならないために、また、このコロナ禍の自粛による日々のリズムの変化で不眠障害を起こさないために、私達は日頃からどんなことを心掛けたらよいのか、その対策についていくつか挙げてみたいと思います。

1. できるだけ毎日、普段通りに起きて日光を浴びる(雨でも曇りでも外の光を浴びる)
2. 長時間の昼寝をしない(20分程の昼寝なら適度に疲労も取れ、夜の睡眠に影響はない)
3. 布団やベッドは夜、寝る時だけに使う(寝る所と活動する所の区別が大事。きちんと分けて過ごす事でよい睡眠につながる。また、パジャマで1日を過ごすのもダメ)
4. 遅くまでテレビやパソコン、スマホなどを見たりしない(明るい画面やブルーライトの刺激で、睡眠を誘発するホルモンのメラトニンの分泌が抑えられてしまう)
5. 寝室やトイレは暗めの照明にする(明るいと、脳や体が睡眠時間だと認識しづらくなる)
6. 寝る寸前の歯磨きは控える(歯茎を刺激することでメラトニンの分泌を抑制してしまう)
7. カフェインやアルコールの取り過ぎに注意する(特に夜は気をつける。但し人によっては、習慣にならない程度の少しの寝酒は、ストレスや思考をぼんやりさせて眠りに誘う)
8. 睡眠の1~2時間前に、ややぬるめのお風呂にゆっくり入る(体の熱を逃すことで眠気がきて、徐々に体温が下がると深い眠りになる)
9. 寝る直前の食事は控える(入眠後も消化活動が行われて脳が働き続け、眠りが浅くなり
夜中に目が覚めてしまう。仕事で帰りが遅い人等は、なるべく消化が早い物で済ませる)
10. 1日や2日、眠れないことがあっても、このコロナ自粛下の状況なら、みんな多少はあることだと思って気にしないようにする(どうしても寝つきにくいに時は、思い切って遅寝早起きで起床のリズムを守る。そうすると、その日はわりとすんなり眠れる)

などなど、その他にも、昼夜のメリハリをつけた行動を自分なりに工夫することが、不眠の症状の予防や軽減、そして改善へとつながっていきます。





漢方薬を使った改善方法

それでもどうしても、不眠からくる様々な症状が続いてしまっている時には、病院での睡眠薬や抗不安薬などを処方しながらの治療が必要となってきます。
現在、病院処方の睡眠薬には、安全性が高いとされているものもたくさん出てきていますが、常用してしまうことで、体質や年齢によっては、起床時に眠気やふらつきが残ったり、筋肉に力が入らなくなったり、転倒の危険性を増したり、一時的に記憶が飛んだり、やめた時の不眠状態が悪化したりなどの副作用もかなり起こりやすくなってしまいます。

こうした睡眠薬等を使いづらい人にとっては、漢方薬の処方がたいへん効果的です。

漢方薬は、睡眠薬のように直接的に睡眠を誘発して、素早く眠らせてしまうことはできませんが、その不眠の原因を探って解消して自然な形で睡眠へと導くことができますし、漢方診断などにおいて原因が明らかな場合には、すぐにその効果を実感することもできます。
また特に、慢性的に続いている不眠にも適していて、「ぐっすり」眠れ、朝「すっきり」目覚められるように、体のバランスを少しずつ整えながら症状を改善していきます。




不眠症は「心」の栄養が不足している

東洋医学では、不眠症を、主に「心」(しん)という臓腑の病気または症状と捉えています。
ここでいう「心」とは、心臓だけでなく、意識や精神活動など大脳系の働きである「こころ」の部分も含まれた概念です。
その為この「心」の働きや機能は、大脳に意識が出たり入ったりする「睡眠」と密接な関係があると言われており、不眠症は、この意識の出入りが「心」の栄養不足などの原因によってバランスが崩れて起こるものだと考えられています。


不眠症の中でも最も相談の多い「寝つきが悪い」「よく目が覚める」といった症状は、特にこの「心」の栄養が不足することで現れやすくなり、その原因は主に2つに分けられます。

1つはストレスによる「気滞」の不眠です。ストレスは自律神経系に影響を与えて、心に運ばれる栄養の通路を阻害して不足させてしまいます。そのため心の機能がうまく働かずに、寝つきが悪いなどの不眠の症状が起こりやすくなってきます。
代表的な治療の漢方薬としては、自律神経系を調節する柴胡に、気を静める竜骨・牡蛎を加えた「柴胡加竜骨牡蠣湯」、痩せて冷え性なら「柴胡桂枝乾姜湯」などの処方があります。

2つ目は胃腸機能の低下や加齢による「血虚」の不眠です。身体の栄養が不足してしまうため、心自体の栄養も不足して、なかなか疲労感がとれずに、眠りも浅くなりよく目が覚めるなどの不眠の症状が起こりやすくなってきます。
代表的な治療の漢方薬には、心血を補う「加味帰脾湯」「酸棗仁湯」などの処方があります。




いずれにせよ不眠症らしき症状を放っておくと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に罹るリスクが高くなるので、自覚があれば、くれぐれも早めの対策や治療をお勧めします。


それから最後に、最も質のいい睡眠を得るためには、シンプルに「眠い」と感じたその時に、そのまま眠る事がベストなのだそうです。

普段から、今までの生活習慣を見直しながら、眠たくなったらすぐに眠れるような環境を整えていきたいものですね。





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梅川 哲朗 (登録販売者・九州中医薬研究会会員・国際中医臨床薬膳師)
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