以前は長崎の五島列島の上五島町(2000〜2004)の町長だったのですね。
そうそう、“五島ばどげんかせんといかん”と思ってね。郷土愛はもちろんのこと、それと、自分の考え方を人前で訴えたかった。自分はこういう街をつくっていきたいんだ!というのを伝えたかったんですよ。
当時の五島列島は「離島振興法」によって守られていてね、海という海、海岸という海岸全部整備されて、道路も整備されたりして公共事業であふれてた。だけど、それではいかんのですよ。五島の本当のいいところはそういうことをするのではなく、自然のままを残して観光化していかなきゃいけない。あるいは五島の文化、歴史、伝統にしても、それを素材としてゼロからスタートしていかないとね。そういうことをみんなに伝えるにはどうするか?と考えるとね、政治家の道があった。
山田さんにとっては「不自然な自然」だったというわけですか。
当時は仕事があふれてたから誰も気付かないのよ。何にもない五島が一番。極端な話、道路なんかはいらない、藪道のままでいい。公園もなくて雑草が生い茂る、そんな自然を見せるのがいいでしょ?そういうふうにシフトしていくためには政治家として自分の主張を伝えなきゃ。それで平成4年に町議会に出たんですよ。平成8年には町議会議長、そして平成12年にその8年間の実績を認められて町長になったというわけ。
具体的にどんなところから手をつけたのですか?
五島の環境を守るために、まず取り組まないといけないのは「環境」という意識を町民あるいは職員が持つことですね。そのために国際標準規格ISO14001というのを町役場で認証取得しました。簡単に言えば、環境を守っていますよ、という資格みたいなもの。長崎県内には79市町村あったけど、県内で最初に取ったんですよ。その後、長崎県、長崎市、佐世保市が続いた。ISOとは何なのか、環境とは何なのかということを地域へ根付かせて、意識改革。
だから、街灯ひとつ作るのにも省エネの街灯をつくったり、太陽光でお金のかからないようなものをつくったりね。特に思いが深いのは、ダム建設工事で地上の山に造るのではなく、地上の地形を変えることなく地下にダムを造ったことですね。そういうものに行政の方から推進していったんです。まさに今、世界レベルで環境問題がテーマになってるでしょ!でも、町長になってからの2002年にISOとって、2004年に選挙で負けちゃったから2年間しか推進できなかった。
町が合併するタイミングで破れた・・やり残したことは?
町長になるときには4年間のスケジュールはもちろん掲げていてね、1年目は環境の町づくり、2年目は福祉の町づくり、3年目は教育の町づくり、4年目は元気のある町づくり。例えば建設事業関係にしても、これらのテーマに即して動いた。だからISOを取ることによって職員の意識を変える、そして私がおろした4年間・・・やり残したことはないなぁ・・・。でも、やりたかったのは事実です。
合併のとき5つの町(若松町・上五島町・新魚目町・有川町・奈良尾町)が合併。合併して2万7000。2万7000になったときには新たな枠組み、グランドデザイン、町づくりの構想をあげる予定だったけど。選挙で負けてからは2年間就職浪人でしたよ。何をしようかなー、と考えてたね。
お店を出そうという構想を実現するまでには時間かかった?
飲食をやろうと決めてから半年間勉強したんですよ。ここの店くらいの規模でも1000万以上はかかりますからね。現金持ってるかと言っても選挙で使い果たしちゃったから、どげんしようか・・・。そうだ、県に、長崎県に行こう。通産省の予算があるわけよ。リースで組みたいんだけどって言っても「長崎県内に店を出すなら組める、福岡だからダメだ」と言われてしまった。
で、次に福岡県に行ったわけ。いろんな書類を作って、厨房機器を福岡県が全部通産省の予算でリース組んでくれた。こっちは一銭も使ってないんだよ。もちろん今は払ってる。ハローワークに行って助成金もらったりもした。45歳以上の人が3人で会社を作ったら最大500万円まで助成金をもらえるんだよ。しかも、これって返さなくていい。そのための申請書を作って提出して、店がオープンしてから半年くらいたって助成金はもらいました。それから、従業員を雇えば給料の補填もしてくれる。そういう勉強を半年かけてやったのよ。やっぱり勉強するといろいろ道があるんだとわかるわけ。法律の抜け道じゃないよ(笑)。
ずいぶん短期で集中的に・・・
国金借入、助成金、リースの組み立て・・・それこそ裸一貫で初期投資の金がないからさ。大変だったよ。福岡県の県立図書館に行けば、各事業を起こそうと思ったとき銀行がお金を出すための審査基準の本があってね。僕は飲食事業の欄を見た。そして事業計画を作る。それを持ってハローワーク行ったり、国民生活金融公庫に行ったり。
町長時代は五島を守ろう、現在は五島を広めようという方針ですか?
どちらも考え方は同じですよ。たとえば、この店を五島でやってもダメ。佐世保や長崎でやってもダメなんですよ。なぜか?佐世保25万人、長崎45万人、その腹では博多の140万の腹とは全然違う。人の流れが違う。だから県外で五島列島を謳うことで、しかも五島列島と交通アクセスが良く、毎日五島列島の魚を運ぶことがコンセプトだから東京だったら困るわけ。朝取れた魚を昼12:30のフェリーで、18:55に着く。ここから30分以内に運べるエリアというのはここ中洲のエリア。
運ばれてきた魚を見てお客様が「これは間違いない!」と言ってくれるのがうれしいよ。今日は何が入っとう?と聞かれると「ヒラメがあるよ」「サバが入ってる」とかね。そこで信頼関係ができるんだよ。五島のアンテナショップとして、五島の観光やPR、宣伝ができればいいな。

しかし、実はもともと技術屋さんなんですよね
そう、実は飲食は素人だった。昔からたくさん資格を取ったよ。
【山田さんの取得している資格】
1級土木施工管理技師、2級建築施工管理技師、2級造園施工管理技師、2級管工施工管理技師、解体工事施工技師、監理技術者講習修了証、監理技術者資格者証、測量士、浄化槽設備士、浄化槽管理士、乙種火薬類取扱保安責任者免状、危険物取扱者免状(乙種4類)、車両系建設機械(解体用)作業主任者技能講習修了証(特例講習)、車両系建設機械(整地・運搬・積込用及び掘削用)運転技能講習修了証、車両系建設機械(ローラー運転の業務)運転技能講習修了証、産業廃棄物処理業(処分課程修了証)、産業廃棄物処理業(収集・運搬課程修了証)、安全衛生推進者養成講習修了証、型わく支保工の組立て等作業主任者技能講習修了証、酸素欠乏危険作業主任者(特別教育修了証)、法定職長教育修了証、甲種防火管理者、安全運転管理者、運転免許証(大型自動車、大型特殊、中型自動二輪)
そんな僕が飲食の店を開こうって言うんだから、周りから「絶対つぶれるぞ」って言うのよ、やっぱり。そういう声は聞こえるけど「余計なお世話だ!見てろよ!」っていう反骨心もあるわけ。
山田芳徳がすごいんじゃない。五島列島の魚全部が一級品なんだよ。五島の魚を使ったら素人でもこれだけの商売ができるんだぞ、ということを五島の皆さんに身をもって示したいな。五島というものを背負って仕事をしたら何も心配はいらん。五島の魚は一流、一級。商売は成り立つんだぞ。博多や全国の人にそんなことは言ってもしょうがない。「あ、そうですか」ってことだもん(笑)。
どんなに遠くにいても地元の人たちに自分の姿を見てほしい?
いや、そうでもないんだな。政治家時代の選挙に勝って天狗にはならないけど、順風満帆でしょ。最後の選挙は勝ったと思ったのに、蓋を開けてみれば立ち直れないほどの票差をつけられて・・・。今でも五島には月に2回帰るけど、五島の人たちが自分を見る目がめずらしい者を見るようで少し気になる。本人たちにそういう意識はないんだろうけど、でも見られてる気がするのよ。でもここ福岡では自分のことを誰も知らないでしょ。だから今生きていられる。知らない土地だけど本当の自分が出せてる。精神的に解放される場所って故郷であるとも限らないんだよ。
地元だと未だに「町長さん」と言われたりして拝まれる。ありがたいけど、もう終わった話。政治の世界にいたのは自分にとっては通過点だから。
五島時代はストレス多かったのでは?
ストレスは全部このときやったね。五島にいるときは家族があってなかったようなものでした。学校行事で子供たちのイベントがあれば参加してスピーチをしますし、婦人会や文化行事、スポーツ大会など、ほとんど毎週日曜日はつぶれてましたね。家族とご飯を食べる時間がなかった。やっぱり公人としてのストレスがあって、言いたいことが言えないこともあるし。たまらんかった。髪も真っ白になったよ。実はこれ、染めてるんだよ。染めるとかっこいいやろ?(笑)
政治家は365日、気が抜けませんね。
酒に頼ってしまったかなあ。40まで酒は飲めなかったんだけど、1日ビールを1本を飲むようにしたら、飲めるようになって。さらに今度は足らなくなってしまって、1本が2本、2本が3本。でも少しでも健康のためにと思って焼酎に変えた。まだ10年くらいしか飲んでないけど、それでストレスを解消してたね。
ただ、酒におぼれてたわけじゃないよ。自分自身をきっちりコントロールして、政治家としての責任もきちんとまっとうしてるからね。ただの酒飲み町長だと思われたらかなわん(笑)。
現在はお酒との付き合い方も変わりましたか
今は仕事が終わって寝る前に楽しく飲める酒になりましたよ。福岡にいると昔ほどのストレスがないから。それに、毎日が出会いだから楽しいね。毎日の出会いに「情報」があるんよね。僕がこれまで49年間培ったものを集約して情報を生かすことができれば店にもプラスになるし、新たな事業展開にもなる。現在は宅地建物取引主任者の資格を取ろうと思ってるんだけどね。そうすると「こういう物件があるけどどう?」とかいう情報がどんどん入ってくる。それこそ店舗情報に生かしたいような情報、ここでは言えない裏情報などたくさんだよ。
お酒以外で癒されるものってありますか?
仕事自体はハードだから気を使ってます。まず、毎朝1時間の散歩。ワンちゃんと・・・チワワなんだけど、これがかわいいんだ。無条件で愛情をそそぎこめるねぇ。
それからできるだけ睡眠を取ること。年を取るとね、深夜に目が覚めてしまうんだよ。3時とか4時に目が覚めて、そこでトイレに行ったり電気をつけてしまおうものなら全然寝れなくなってしまう。若い人たちにはわからない感覚だろうけど・・・あなたもそのうちわかるようになるからね。 これでタバコをやめたら尚良し、なんだけどね。酒を飲むときって必需品になってしまってるもんね。健康管理の取材だけど、こればっかりは許してくださいね(笑)。
ストレス発散じゃないけど、週に一度の家族とのコミュニケーションに時間を使えるようになったのは大きいかもしれない。隣の店がオープンしたから行ってみよう、とかスーパーで買い物することとか、家族で行動すること。そういうときにはなんとなく癒されますよ。 お酒でも何でも、活用するのはいいけど依存するのは良くないと思うんですよ。酒は飲むもの飲まれるな、って言うでしょ。今こうして楽しいお酒を飲めるようになったことは幸せなこと。政治家時代の12年間、燃えに燃えたからこそ今を楽しめるのかもしれないね。
お話を伺っていると、生きることそのものに対する意欲を感じますね
おれはどん底まで見たつもりだし、人間の裏表も見た。町長選挙負けてから兄弟がやってる会社もつぶれた。五島でも何人の人が自ら命を絶ったことか。でも、そういう「底」からね、頑張りさえすれば第二の人生がある。
人間は再生していくような生き方をしないといけないよね。必ずそういう糸口、チャンス、出会いがある。そういうことをみんなに伝えていきたいね。自分のプロフィールがそういうことに役に立つのであれば、そういう場を設けて話をして勇気を出してほしいよ。
本日はどうもありがとうございました。
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